体験ルポ 世界の高齢者福祉

 スウェーデンデンマークアメリカ、シンガポールの高齢者福祉の現場にボランティアとして参加し、その体験をルポとしてまとめた新書。つい、先ほど読み終えた。ちょうど、20年ほど前に出版された本だが、高齢者福祉を議論する際に未だに課題として上がることの多くが、すでに本書の中に概ね記されている。

 この20年で高齢者福祉の世界は、ずいぶんと変わったとされている。介護保険の導入によって、家族介護は終焉を迎え(?)介護は社会化された。3年に一度の制度改正を通じて、例えば、小規模多機能の導入や介護報酬の引き上げなどサービス面での改善も適時おこなわれている。それなりに高齢者福祉を取り巻く環境は変わったといえる。

 私は、高齢者福祉の専門家ではないが、周囲に福祉関連の仕事に就いている方が多く、実態を聞く機会が侭ある。彼のらの声を聞く限りでは、未だ高齢者福祉の現場には課題が多く残されており、現状は「それなり」のものであると判断せざるをえない。

 山井氏が本書の中で提言している「脱「寝たきり大国」」への道は未だ半ばにあるといえる。政治家となった彼のさらなる奮起を促したい。

 また、一人でも多くの国民が、自らの問題として福祉を捉えることの重要性に気づくことを祈らずにいられない。


体験ルポ 世界の高齢者福祉 (岩波新書)

体験ルポ 世界の高齢者福祉 (岩波新書)