ボランティア もうひとつの情報社会
初版が、1992年。私の手元にあるものが、32刷で2003年のもの。今も絶版になっていないようなので売れ続けているようだ。50刷ぐらいには、なっているかもしれない。増刷されることなく、1〜2ヶ月で店頭から消えていく(あるいは、多くの書店では店頭にも置かれない)ほとんどの中ではヒット作といっていいと思う。
ボランティアやNPOについて知りたい人が、初めて手に取ることが多いのだろう。確認はしていないが、現在でも大学の非営利組織論などの授業で参考文献として学生に紹介されているのだろうし、ボランティア、NPO関連の論文での引用も多い印象がある。古典というほど古い本ではないが、新しい古典ともいうべき位置づけになりつつあるのではないか。
本書の書評については、Amazonのレビューから、専門家筋の本格的なものまでインターネットで多数読むことができるので、私は、少し違う読み方を試みてみたい。
以下に、本書に登場する組織や個人について、20年後の今をインターネットで確認できる限り調べたものを記す。悪趣味と言われそうだが、私はこの手の確認作業が子供のことから好きで、例えば、新聞記事で紹介された人物(基本的には、政治家などの公人の歩みに関心を持つことが多かった)がその後どうなったかが、どうしても気になり関連しそうな書籍をあたったりということを繰り返してきた。
インターネットが一般化してから、この手の作業はやりやすくなった。間違いが流布していることもあるので紹介する際には気をつけないといけないが、とりあえずこういった情報がインターネットで確認できたという事実を簡単に整理し紹介したい。
- 金子郁容。現在も慶應義塾大学教授、内閣府新しい公共推進会議座長。
- 社会福祉法人仁育会 青梅療育院。事業内容から藤橋小学校との交流が、変わらず続いていることが確認できる。療育院のスタッフとして紹介がある林正さんは、介護支援専門員として著作を発表している。
- Trevor Ferrell。リサイクルショップを経営しているようだ。彼の名を冠したNPOは現在も活動を継続している。
- アガペハウス。現在も活動は継続されているようだ。代表のケン・ジョセフは、著作も出版している。ボランティアとして紹介されている。竹友有二さんは、ユニセフの職員、松井大倫さんはNHKに務めてらっしゃるようだ。当時、全電通の大分県支部委員長だった梅山忠信さんは、引退後も震災ボランティア活動を続けている。芙蓉エアカーゴ株式会社は、国際航空貨物を扱う物流会社として健在である。
- 佐藤智(医師、ライフケアシステム)。在宅医療の第一人者として実践・普及に取り組まれてきた。介護保険制度の導入についても少なからぬ影響を与えたようだ。専門的な著作も多数出版されている。
- 世田谷ふれあい公社。2000年4月に世田谷区社会福祉協議会に統合された。
- 日本ケアシステム協会。NPO法人として法人化、全国各地でまごころケア(介護保険など公的制度の枠外の全ての事業)に取り組む市民活動団体をネットワークの要として活動している。
- さわやか福祉推進センター。公益財団法人さわやか福祉財団として活動している。堀田力理事長は、ロッキード事件を担当した検事として知られ、日本の福祉関係者の中では最も一般に認知され知名度の高い人物と考えられる。
- 安積純子。CILくにたち援助為(エンジョイ)センター代表として活動。個人ブログを通じて情報発信をおこなっている。
- 武田哲夫。日本IBM取締役退任後、拓殖大学教授、学長などを務めた。
- 作者: 金子郁容
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1992/07/20
- メディア: 新書
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