誰も書かなかった(?)政治学校・政治塾

 近頃、政治塾の設立が流行りだ。90年代にもちょっと流行った時期があった気もするが、これほど多くの数ができるのは日本政治史の中ではじめてのことだろう。

 政治塾とは、そもそも何なのか。その定義は、必ずしも定まっているわけではなく、曖昧な印象がある。新聞などでは概ね政治家を目指す人が、政治について学ぶ場として捉えられているようだ。しかし、実際にいくつかの政治塾の募集要項を読むと、参加対象を立候補を考える人に限らず、単に政治について学びたい一般の市民の参加を認めている政治塾も多いようだ。立候補者予備軍をプールするだけでなく、支持者を獲得する場として考えられていることが想像できる。

 一般的な政治塾(一部マニアックなものも含まれているが)については、ザ選挙さんがまとめられた政治塾一覧リンクで確認できるので、ここでは、あまり取り上げられることがなさそうな政治塾について書いてみたい。

 元々、政治家個人が私塾を開くというスタイルで政治家予備軍を育てたり、支持者と交流するということはある程度おこなわれていた。個人的に記憶があるところでは、例えば井出一太郎塚本三郎は引退後も後援者と交流する機会を持っていた。前尾繁三郎は、地方議員に参加者を限定していたと思うが、政治について学ぶ私塾を開いていた。

 あるいは、一昔前までは書生という制度があり政治家の自宅に住み込んで修行(?)を積むことは一般的だった。書生になることは、必ずしも政治家を目指すことが前提とはしないが、日常的に政治家に接することになるので、ある意味政治について深く学べるシステムだったと思う。私が最後に直接、国会議員の自宅に書生を置いているという話を聞いたのは、21世紀のはじめなのでひょっとしたらまだ、書生を置いている政治家はいるかもしれない。さすがに数は少なくなっているだろうが。


田中角栄邸書生日記

田中角栄邸書生日記

 また、かっての自民党の派閥の中には青年部を設けている所もあって、そういった場も、ある種の政治塾的な機能を果たしていたといえるかもしれない。

 政党やその関係者が設けた政治学校も複数ある。例えば、旧民社党系の政治学校として現在も活動と続けている富士政治大学校。新党ブームの頃には、日本新党女性のための政治スクール新生党新生党学生塾、新党さきがけのさきがけ塾などが開設された。

 その他、政治家個人などが開いている政治塾も多数ある。著名な国会議員、元国会議員が設立したものとしては、鳩山兄弟の鳩山友愛塾NPO法人田中秀征の民権塾小林興起政経塾糸山英太郎糸山政経塾笹野貞子京都創世塾などがある。

 ちなみに、楽天政治LOVE JAPANの企画としてハマコー政治塾という塾がウェブ上で開設されたことがある。さすがにこれは、政治塾とはいえないだろうが・・・

 地方政治家の中にも政治塾を開くものはあり、維新政治塾以前から活動していたものとして、埼玉県知事上田清司の上田政治塾、元久居市長藤岡和美のローカル政経塾「知足の会」鴻巣市議会議員の中根一幸(結成当時、後に衆議院議員)の若者政治家養成塾、若者政治家養成塾を前身とし結成された、春日部市議の白土幸仁が塾長を務め、関東の若手地方議員有志が運営する若手政治家養成塾、北海道議会議員の道見重信が主催する道志会阿賀野市長の天野市栄が代表を務める地域政党日本新生が開く政治家養成塾などがある。また、先の大阪府知事選で敗れた、前池田市町の倉田薫も政治塾の開講を準備しているようだ。

 政治家以外の個人や公益法人などが主催するものには、松下政経塾第一期生林英臣の林英臣政経塾森山眞弓が塾長、首都大学東京宮台真司教授がスーパーバイザーを務める咢堂塾21赤松良子が代表で女性候補者の支援をおこなっているWIN WIN ウィンウィンある。

 私の記憶にあるだけでこれだけの塾があるのだから、実際には、もっと政治塾というものはあるのでは(存在したのでは)と思う。何かの機会に他の塾を見つけたら、この記事に引き続き追加していくことにしよう。

 最後にふと思い出したことがある。大学時代にゼミの教授に松下政経塾をどう思うかと聞いたことがある。その時の先生の答えは、「政治家というのは塾に行ってなるものかね?」というものだったと記憶している。

 政治家は塾に行ってなるものなのか。今一度、咀嚼してみたい。

<追記>