市長の座

 2011年の名古屋市長選に敗れて、政界を引退したと思っていた石田芳弘衆議院議員(元犬山市長)が、岐阜県下呂市の市長選に出馬を表明した。

http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20120221/201202210958_16313.shtml
下呂市長選、石田氏が正式出馬表明 「地方から国変える」
2012年02月21日09:58

写真:下呂市長選、石田氏が正式出馬表明 「地方から国変える」
下呂市政運営についての考え方を語る石田芳弘16 件氏=20日午後、同市森、同市民会館

 任期満了に伴う下呂市長選(4月8日告示、同15日投開票)に出馬の意向を示していた元衆院議員の石田芳弘16 件氏(66)=犬山市=が20日、下呂市内で会見を開き出馬を正式に表明。「下呂の情勢を知り、市長をやってみたいと政治的な情熱をかきたてられた。地方から国を変えたい」と意欲を語った。

 石田氏は「経済の高度成長ばかりでなく精神的な豊かさを下呂市の新しい価値観としたい」と基本理念を示し、「議員内閣制のように市議にも行政運営に関わってもらう」などとの考えを示した。

 観光政策については「長期滞在型の欧州の温泉地のような世界的温泉保養地を目指す。御岳山を観光資源として生かしたい」と持論を展開、そのほか農林業振興、教育方針などについても語った。

 石田氏は愛知県犬山市長を経て、2007(平成19)年の愛知県知事選に出馬し落選。09年衆院選では愛知6区に民主党から出馬し当選したが、辞職して挑んだ名古屋市長選では河村たかし市長に敗れた。

 下呂市長選には現職の野村誠氏(63)も再選を目指し出馬を表明している。

 下呂市の事情は深くは知らないが、新聞等を読む限りでは、前回の市長選に関連したごたごたで、下呂の地方政界にはきな臭い空気が漂っているようだ。個人的には、石田氏の政治的手腕は評価しているし、たまたま若い頃、何度か多少直接話をしたことがあり、その際の印象も悪くなかったので好感を持っている。

地域主権 石田芳弘民主党衆議院議員犬山市長 政治家 USTREAM動画配信
http://www.16lc.jp/ishidayoshihiro2/

 特定の地方でキャリアを積んだ政治家が、他県に転身して成功した例は、あまり聞かないが、経験と一定の手腕を持つことを証明した人物の力を地元に縁がないということだけで活かさないというのはもったいないと思う。

 いずれも東京都知事への転身を図った事例だが、東国原英夫浅野史郎、古くは阪本勝などがいるが、皆、落選している。基礎自治体レベルでは、元愛知県議の谷口守行(自民党から衆院選出馬(愛知2区)、落選経験あり)が、三重県大紀町長選挙に出馬し落選した事例は記憶にあるが、国会議員経験者が、国会議員時代の地盤を離れて首長選挙に出馬した事例は聞いたことがない。政治家が、固有の選挙区で継続して出馬することを前提とし、慣れてきた日本の有権者に今回の石田氏の挑戦がどう受け止められるか、非常に興味深い。

 さて、石田氏の件とは別に、今日ふと気づいたことを忘れないうちに書いておきたい。

 日本の、国会議員の人数は衆参合わせて722名。市長の数は、810名(内23名は特別区の区長)。市長会のウェブサイトで確認し、平成の大合併を経て、いつの間にか市の数はこんなに減っていたのかと驚かされた。つい10年ほど前には、市町村は3,000以上あり、市も1,000以上はあったと記憶しているのだが。

 絶対数だけで見ると、国会議員も市長もその地位の希少性という意味ではあまり変わらなくなっているとも考えられる。権力者としてどちらが、優位な地位にあるのかは、個々の国会議員の地位や市の実力によって一概に論じることはできないが、多い場合は数万人の職員の頂点に立ち、大統領的存在である市長の座に一兵卒の議員であるより魅力を感じる国会議員や元国会議員が多くいることは容易に理解できる。今後も市長の座に挑戦するものは、出てくるだろう。しかし、その市長の座は国会の議席数とあまり変わらなくなっていることを挑戦者は、考慮しておいた方が良いと思う。


証言・まちづくり

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http://www.hokkaido-jichiken.jp/pdf/2010/sakuraba.pdf